ヴェローナでみた夢、モンタギュー家の君
3/29~4/25の1ヶ月間、自担は花の都ヴェローナでロミオとして熱く生き、熱く死んでゆきました。
Romeo and Juliet -ロミオとジュリエット-
翻訳:松岡和子
演出:森新太郎
主演 ロミオ:道枝駿佑
ジュリエット:茅島みずき
2021.3.29-4.18
東京グローブ座 25公演
2021.4.21-4.25
梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ 7公演
全32公演
関西ジャニーズJr.なにわ男子道枝駿佑くん。
グループでのお仕事、かつかつのスケジュールの連ドラ撮影、ドラマ番宣でのバラエティー番組出演、新しく始まる冠番組、そして最後の学生生活に高校卒業、、、18才の青年にはあまりにもいっぱいいっぱいの毎日で、その中で演り遂げた初単独主演舞台ロミオとジュリエット。
これから書いていくのは、作品の感想のいわゆるレポブログ+私の思うあれこれです。作品の感想をまとめたレポブログ的パートも後半にもちろんありますが、前半には私のお話もちょろっとあります。てめェの自分語りに興味ねーよの方は、御手数ですがそちらのパートまでお飛ばし下さい。
道枝くんがロミオを…?
道枝くんにロミオが、座長が決まったのを知ったのは2021年1月7日早朝3時。夜通し作業をしていて、(やっと終わった…さあタイムラインパトロールして寝るか…)と思いツイッターを見ていたら飛び込んできた
道枝駿佑主演舞台『ロミオとジュリエット』
の文字。偶然にも私は情報が公になってすぐに知ることになりました。
信じられませんでした。待って待ってオタクになるしかできませんでした。実際待って待ってのみのツイートだけしてとりあえず寝ました。
まって
— ピむ (@kanokemade) 2021年1月6日
まって…
— ピむ (@kanokemade) 2021年1月6日
まって……
— ピむ (@kanokemade) 2021年1月6日
でも翌朝起きてみても見間違いではなく、タイムラインにはフォロワーの「みっちーおめでとう」ツイートがずらり。
ロミオとジュリエットを、道枝くんがロミオとして、座長として演じること。マジでまったく理解できませんでした。
担当の贔屓目なのは分かっています、いくら自担にはゲロ甘といえ高く評価し過ぎだと笑って頂いても構いません。でも私は本気で(待てば道枝くんに主演ドラマの仕事はきっとやってくる、主演映画も、単独CMも全部かならずくる)と思っていましたし、今も思っています。
けれど、まさか、そのどれよりも早く単独主演舞台が決まるとは思ってもいませんでした。道枝くんが舞台で座長として主演を張れるなんてそんなことできっこないと勝手に思っていましたし、こうやってロミジュリが決まった後も、(きっと知名度だけで選ばれたんだろう、この公演で道枝くんの演技が舞台には向かないことがバレてしまう、舞台関係者に見切りをつけられてしまうだろう)と勝手に決めつけていました。
だからこそ、次はきっとないと思っていたからこそ、悔いが残らないように入りたいだけ入ろうとも心に決めていました。
私は幼少のころからクラシックバレエを習っており、いまはバレエスタジオに所属しながらバイトとしてアシスタント講師をしている立場の下っ端ダンサーです。そして私の関わるクラシックバレエにもロミオとジュリエットの演目はあり、実は私が一番好きな全幕作品です。
そのためロミジュリが悲恋の物語だというのはもちろん知っていました。そして道枝くんにちゅきちゅき拗らせてめんどくさい恋情を抱いている私にとってなかなかにしんどいシーンがいくつもあるなーーーとも漠然と思い巡らせていました。
ロミジュリが決まって、限界オタクのおともだちからたくさんのアンタ大丈夫なの連絡が来ました。私がメンヘラを加速させていることを予想したのでしょう。
しかし台詞のないバレエのロミジュリしか知らず、そして情報解禁からしばらく経っても道枝くん主演舞台という事実にまったく現実味を持てなかった私は、「なんかよくわかんないんだよねー」とずっとヘラヘラしていたんですよね。能天気な奴です。
初日が近づき、シェイクスピアを専攻していた友人に勧められ原作の翻訳を読むことにしました。今回のロミジュリでも翻訳としてカンパニーに入っていらっしゃる松岡和子さんのものです。
これが、私がバレエ以外のロミジュリに初めて触れた瞬間でした。
正直真っ先に感じたのは「難しい」、それでした。難しかった。道枝くん、初めて読んだときどう思った?白目向かなかった?
読書は好きな私ですが一度文を目で追っただけでは理解できない部分も少なくなく、旧約聖書やギリシャ神話からの引用、古代ローマの詩の一節など、注釈に助けられながらなんとかかんとか読了しました。
そしてすぐに2周目を読みましたが、ここではやはり「しんどい」でした。オタク語としての「しんどい」です。ようやく古典的で難解な比喩表現や言い回しの意味がわかり、私が大好きなバレエのロミジュリの各シーンに対応する台詞を知り、2周目はこの「しんどい」ポイントに付箋を貼りながら読み進めました。このうちどれだけの場面が舞台上に残るんだろう、この台詞をどう表現するんだろうと、わくわくしながらも恐ろしい気持ちでした。
2周目を読了、たくさんの付箋が貼られた文庫を見て、ここで一気に道枝くんロミジュリが現実味を帯びてきました。このとんでもない悲恋の物語を、とんでもなく難解で古典的な長台詞もある舞台を、道枝くんが主演で座長を務めるだと?え、え、意味わかんない。無理っしょいろんな意味で。と。初日およそ2週間前のことです。
ここから当日まではヘラヘラしていたそれまでと一転、寝ても覚めても明けても暮れてもロミジュリのことしか考えられませんでした。口を開けば「ロミジュリ無理しんどい無理」、目を瞑ればロミオの道枝くんが視えました。
そんなこんなで、感情のジェットコースターに乗りながら東京初日を迎えました。
ロミオとジュリエットと私と
それでは、ここからは私の個人的な作品への感想を書いていきます。レポブログらしいパートに入りますね。
先述した通り、私は松岡先生の翻訳を「しんどい」ポイントに付箋を貼りながら読み進めました。
その付箋の数は全部で27枚。そしてそのうち実際25箇所が台詞となり演技となり舞台の上にのせられました。そのどれもが私の心を震わせる大好きなシーンです。
そしてそれ以外にも、翻訳を読んでいるときは付箋を貼らず流してしまったけれど、観劇してみて強烈な印象を残してくれた大好きなシーンもあります。
そんな目を瞑ればありありと浮かんでくる台詞やシーンをいくつか、できる限り舞台上の時系列に沿って書いていくことにします。
まずはいちばん初め、序詞役の4名が登場するシーンです。
開演前静まり返った劇場(と言いたいところですが、見学席を振り返ってニヤニヤザワザワ騒ぐ観客席の日も少なくなかったのがやるせない気持ちです)、舞台上にあるのは回転する一段高いステージと場面転換を助ける移動式の壁が二枚だけ。
そこに装飾のない黒の上下に黒のハットというシンプルな衣装の序詞役4名がコツコツと靴音を響かせて登場。会場を見渡し、口火を切ります。
単純かもしれませんが、複数の人間が寸分狂わずぴたっと呼吸を合わせて伝える言葉ってすごくドキッと心を掴まれませんか?私は単純なので、毎回この最初のシーンで心臓を鷲掴みにされていました。
開演してド頭ひとつ目のシーンから台詞は古典的で、現代を生きる令和ギャルなジャニオタには難解です。そしてここから終演までずっと。それでも最後まで気が抜けることなくロミジュリの世界に入り込めたのは、この最初の序詞役のシーンで新大久保、梅田から花の都ヴェローナに一気に連れて行ってくれることが大きく影響しているように感じます。
「いずれ劣らぬふたつの名家」「花の都ヴェローナに」「新たに噴き出すいにしえの遺恨」「人々の手で血を汚す」「不倶戴天の胎内から」「産声あげた幸薄い恋人」「重なる不運が死を招き」「親の不和をも埋葬する」「死を印された恋の成り行き」「いとし子の命果てるまで」「終わりを知らぬ親同士の争い」「三時間の舞台で繰り広げ」「ご高覧に供します」「至らぬところもございましょうが」「ご満足ゆくよう努めます」
と、続くこのプロローグ。いつの間にか覚えてしまったこの台詞をお風呂でちょっと大きめの声で呟くのが、私の日課になりました。
次はなんといってもロミオの登場シーンです。
ベレー帽を斜めに被り、ロングブーツに清潔なシャツ、上品な紺のジャケットに袖を通し、ポケットに手を入れながらゆっくりと歩いて登場します。
シンプルでありながらも良家の、良いとこのぼっちゃんだというのがひと目でわかる佇まいです(私としてはもう少し装飾のあるパターンの衣装も見たかったな、とも思いましたが…ジュリエットがシンプルながらとても凝った素敵な衣装でなおかつ着替えも多かったのもあり…もっと金持ちボンボン丸出しの煌びやかな衣装も見たかったな…原作どうこうは知りませんが…)。
東京グローブ座公演では客席後ろの扉から下手通路を通ってロミオは出てくるのですが、あの登場はいま思い返しても夢みたいで魔法みたいで幻想的で。なんとも非現実的で。私と同じこの世の人間なはずがありません。存在が勝ちすぎている。優勝。誰も君には敵わないよ、、、
いつもはファンとファンサうちわとペンライトとを映すその瞳は、きらきらと光を宿しながらも何を映すのかは決して教えません。長過ぎる脚、小さすぎる頭、華奢な腰、トレーニングのおかげか男らしくなった肩周り、中性的なヒップライン、煌めきすぎている瞳、通りまくった鼻筋、優しいふわふわまゆげ、桃色で柔らかな唇、小さめで少し下めについた耳、お手本のようなEライン、綺麗にセットされた伸びた髪。そして役者道枝駿佑の存在。そのすべてがロミオを形作っています。一体全体なんなんだあの求心力は、、、一朝一夕で創り出せるものではないでしょう。会場中が息をのみ、主役の登場に釘付けになります。
このときの私に(ワー!キャー!!道枝くんだー!!!)となる隙は全くありませんでした。道枝くんではなく、間違いなくロザラインへの恋に病むモンタギューのロミオの登場です。
そういえば!この最初の登場の前、扉の中で待機しているときに思いっきり足踏みしていたと道枝くん本人がロミジュリレポで振り返っていました。ロザラインへの恋の病にへとへとなロミオを演出するためには心拍数を挙げるのがいいんじゃないかと考えて、そうだ!思いっきり足踏みして無理やりドキドキを作ろう!に行きついたようですね、、、なにそれ、、、、、ばか真面目で一生懸命で可愛い道枝くん、、、、、、
そしてこの登場から続くロミオと親友ベンヴォーリオのシーンに、初日私はおったまげることになりました。
先述したように私は道枝くんに主演舞台が決まるなんて思ってもいませんでしたし、いざ決まっても(きっと話題性先行で決まったんだ、今回の演技で舞台関係者に見切りをつけられる)と勝手に決めつけていました。
頑張っているのはもちろんブログや雑誌で知っていましたし、なにより彼の今までのお仕事への向き合い方を見てきたので頑張らないわけがないというのもわかっていたつもりです。でもそこまで演技のハードルを上げていなかったのも正直なところです。
しかしどうでしょう、そこにいたのは道枝くんではなくロミオでした。決して道枝くんが透けて見えない演技でした。あれだけの舞台用の演技ができるようになるにはどれだけの努力が必要だったことでしょう。
公演に向けての怒涛のステージ誌インタビューで、どこへ行っても「不安しかない」と言葉にしていた道枝くん。それと向き合ってくれた道枝くん。ありがとう。見くびっていてごめんなさい、誇りの自担です。
ロミオ「憎しみが因(もと)の騒動も相当だが、恋が因だともっと大きい。何のことはない、ああ、憎みながらの恋、恋ゆえの憎しみ。ああ、そもそも無から生まれたもの!ああ、憂いに沈む浮気心、深刻な軽薄さ、形の整ったものの中のゆがんだ混沌!鉛の羽根、明るい煙、冷たい炎、病んだ健康、眠りとも呼べない醒めた安眠!恋をしながら少しも楽しめない。笑えるだろ?」
ベンヴォーリオ「いや、泣けてくる」
ロミオ「思いやりがあるな、なんでだ?」
ベンヴォーリオ「君の嘆きを思いやってだ」
ロミオが親友ベンヴォーリオに、自分を悩ませる美女ロザラインへの恋心を打ち明けるシーンです。
恋に酔いしれ恋に病み、自分のなかのロザラインしか見えなくなってしまったロミオ。恋に溺れ恋の前にお手上げ状態でもうどうしようもないその雰囲気は、今までの道枝くんが経験してきた演技仕事では見たことがないものでした。
まともで常識人な親友ベンヴォーリオとの対比も、リアルな友だち同士らしくて面白かったです。ベンヴォーリオはよくもまあここまで恋にズブズブで親友のアドバイスにも聞く耳を持たない話の通じないロミオの相手をできるなあと尊敬します。私ならこんなメンヘラまともに相手はできません。メンヘラの耳に念仏、何言っても無駄ですもん。なにより面倒くさいし。それでもベンヴォーリオはロミオの話を親身に聴いてやり、そんな女はやめろとロミオを思ってアドバイスをする。ベンヴォーリオは一貫して真面目で優しい普通の男です。
ジュリエットは舞台中にロミオという最初で最後の恋を知るのに対し、このようにロミオは登場からステージの真ん中で死んでゆくまでずっっっっと恋をしています。舞台上ではロザラインに心奪われているところから始まりますが、その前から恋多き男なのでしょう。
ロミオはロザラインにここまでの恋心を抱いていながら、この後すぐにジュリエットに乗り換えます。
ベンヴォーリオにロザラインへの恋心を打ち明けたこの夜、敵であるキャピュレット家の宴会にロザラインも出席すると知ったロミオは、恋する彼女目当てに宴会に乗り込みます。
ベンヴォーリオ「キャピュレット家恒例の宴会にはヴェローナじゅうの憧れの美女だけでなく君が首ったけのロザラインも来る。行けよ、そして曇りのない目で較べてみるんだ、あの人の顔と、俺がどうだという人の顔とを。そうすれば君の白鳥が実はカラスだと分かるだろう。」
ロミオ「信心深い俺の目がそんな偽りを言うなら、涙は炎に変ってしまえ。幾度も涙に溺れながら死ねなかった異端者同然のこの目を、嘘をついた罪で火あぶりにすればいい。俺の恋人より美しい女だって!この世の始まり以来あの人に並ぶ美女は見たことがない。」
ベンヴォーリオ「あの人を美人と見たのは較べる女がそばにいなかったからだ。」
ロミオ「行こうじゃないか。でもそんな女を見るためじゃない、恋する人の美しさにひたるためだ。」
そう言って乗り込んだ宴会。しかしそこでロミオは思いがけずキャピュレット家の一人娘ジュリエットと出逢い、一目惚れし、その夜のうちに結婚の約束をし、次の日の昼には婚礼の儀式も済ませてしまうのです、、あれだけ心を病んだロザラインはどこへ行ったのでしょう(笑)
当のロミオは真剣なのですが、笑っちゃうくらいの恋への振り回されっぷりです。恋に浮かれまくっているにも関わらず愛に純粋で、なんというかもうどうにもこうにも助けようがなくって、、、17、8才の誰にも手が付けられない暴走する恋心と性欲がとってもキュートに描かれています。
そんなロミオに東京グローブ座で初めて出逢った初日のこのシーンこの時間、私は一生忘れません。
さて次、バルコニーのシーンからは有名なあの台詞ではなくジュリエットの小鳥のたとえを選びます。
初めての出逢いを経た宴会の後、石垣を飛び越えてキャピュレット家の館の庭に忍び込んだロミオと、バルコニーに出てきたジュリエット。一晩中愛を語り明かし、朝日に告げられた別れを惜しむシーンです。
ジュリエット「もうすぐ朝よ。やっぱり帰って。でも、いたずらっ子が飼っている小鳥と同じで、遠くまでは飛ばせたくない。足かせをはめられた哀れな囚人のように、手元からほんの少し先までは放してやるけれど、すぐに絹の細紐で引き戻すの。大好きだから、自由に飛んでいってほしくない」
ロミオ「君の小鳥になりたい」
ジュリエット「ああ、そうしてあげたい。でも、可愛がりすぎて殺してしまうかもしれない」
この台詞は、翻訳を読んだときからずっとずっと忘れられなかった台詞です。
ジュリエットは恋をすると狂ってしまうこと、「可愛がりすぎて殺してしまう」可能性だってあることを知っていました。
この小鳥の例えは、14才の誕生日を迎える前の少女の口から出たものです。14才になる年ということは、角紳太郎、丸岡晃聖、亀井海聖ラインです。いくら女の子の成長は早いといえ、まだまだ幼いジュリエットの聡明さと強さには驚かされます。
しかし一方でここまで恋の危険性を感じていても躊躇いなくそこに飛び込んでいけるのは、経験のないジュリエットの若さ故でしょう。そこはやはり微笑ましいです。
そして食い気味に「君の小鳥になりたい」と叫ぶロミオ。バカみたいにジュリエットに夢中で、その目はロザラインなんか忘れてジュリエットただ一人しか見えていなくって、とってもキュートです。恋と愛と性欲に衝動のまま振り回される姿には、(この浮気野郎!)と笑ってしまいながらも純粋さを感じます。この微笑ましさは、ロミオが18才の道枝駿佑だからかなあと。
このシーンをはじめとして、舞台を通してジュリエットはいつだってロミオの一枚上手だと感じます。
17、8才のロミオは自分が恋に振り回され狂わされていることに気づかないまま死んでゆくのに対し、14才になる前のジュリエットは自分が恋によって衝動的になっているのを自覚しながらそこに飛び込んでいって死んでゆくような印象を受けました。引き返したくても引き返せないのかもしれませんが。
この後にも少し書きますが、ジュリエットがばあやからロミオ追放の知らせを受けたときもそうです。
ジュリエットは大好きな従兄を愛する夫ロミオが殺したと知り、ロミオがその罰としてヴェローナから追放になったと知り、一度錯乱状態に陥ります。当然だと思います。しかしその後すぐに状況を整理し再確認し見切りをつけ、自分は夫となったロミオを信じ愛することを再度誓います。
強い。ロミオは行き当たりばったり的にジュリエットと出逢いとんでもない勢いで恋に溺れ転がり落ちていくのに対し、ジュリエットはどんな結果になろうとロミオを愛することを自らの意志で選んでいるよう。
なぜジュリエットはここまで強いのでしょうか。
私はジュリエットママの影響が大きいように思いました。舞台上で彼女が大きな話題になることはなかったけれど、ジュリエットママの存在は個人的にすごく気になりました。
初日私はジュリエットママのことを、声が甲高くてヒステリックでオーバーリアクションでザ・金持ちのマダムーくらいに思っていました。
でも、乳母の話をなかなか遮ることができないジュリエットママ(関係性、上下関係を考えればすぐに遮れるはず)。パリス伯爵を書物、妻となる人をその表紙、ジュリエットの目を索引と例えたジュリエットママ。パリスとジュリエットの結婚を望んでいたにも関わらず、夫キャピュレット(ジュリエットパパ)がジュリエットの承諾なしにパリスと結婚させようと決めたときには、言葉にはしなかったもののわかりやすく態度に大きな不信感と抵抗感を露わにしたジュリエットママ。
実際に養育し長い時間一緒にいたのは乳母であるばあやですが、ジュリエットのこの強さと賢さはジュリエットママからきている部分もあるのではないかなと私は勝手に感じました。なぜかはわかりません、でも名の知れた良家モンタギュー家の妻として生き、14才前後でジュリエットを産み、教養にも富んだジュリエットママの賢さがジュリエットにも受け継がれているように思えてなりません。
そしてすごくすごくお美しいんですよね、ジュリエットママ、、ロミジュリ本編では見えない部分のジュリエットママについて、もっと深く知りたくなっちゃいました、、、、、
次に挙げるのは台詞というよりシーン、もとい演者の動線です。
バルコニーのシーンの後、ロミオは神父様に会いに庵に行きます。敵対する家の娘であるジュリエットに恋をしてしまったことを打ち明け、すでに結婚の約束をしたことを伝え、恋の赦しを乞い、そして神父様の御心添えによって結婚させてもらうためにです。
もちろん舞台上すべての動線がこの定義に当てはまるわけではありませんし、私はバレエの世界しかよく知りません。でも私が習ったのは、舞台上で上手は正の方向で下手は負の方向。上手に主人公が向かうときは良いことが起こる兆候であることが多いし、下手に向かうときは悪いことが起こる兆候。上手から登場する人物は行き詰った困難にとって解決策となるキーパーソン、下手から登場する人物はその後物語を悪い方向に舵を切る元凶であることが多い。上手は生、喜び、結婚、誕生のイメージであるのに対し、下手は死、苦しみ、敗北、滅亡のイメージです。
そしてロミオは神父様に会うために庵に向かう際、大手を振って意気揚々と下手に捌けます。
偶然かもしれない、考えすぎかもしれない。でももしかしたら、頼りない大人たちの中で唯一若い二人の味方になってくれた神父様に恋を相談したことが、ロミオにとって最初の過ちだとしたら。そんな悲しいことだったりもするのでしょうか。
そもそも若い二人の味方が神父様一人しかいないというのも大変悔しく、悲しく、おかしな話。
大人たちに追い詰められ、大人たちの犠牲になり、若い二人が死ぬまで許されなかった恋。
権力・名誉・家同士の争いから全く頼りにならなかった大人たちの中で唯一の味方であり、二人を「息子」「娘」と呼び、最後まで二人に寄り添った神父様。神父という自らの立場から考えるとあまりに危険すぎる手を使ってまで二人のために手を差し伸べてくれた。しかしそれらの策はすべて時の不運によりことごとく失敗してしまう。結果として、ロミオはジュリエットを抱いて毒を飲み、ジュリエットはロミオを抱いて短剣を自らに貫きます。
神父様に会うため、大手を振って意気揚々と下手に捌けたロミオ。そこに私は勝手に意味を見出してしまいました。これはさすがに嘘ですが、このことが気になって夜も眠れませんでした。でもそのくらい引っ掛かりました。というか勝手に引っ掛かっちゃいました。
次はロミオの親友マキューシオとのダジャレ合戦です。
ロミオもマキューシオも、良家のおぼっちゃま。幼いころから高い教育を受け、女の子大好き性欲モンスターでありながらもしっかり学のある男たちです。よってダジャレ合戦もとってもハイレベル。とんでもないスピード感で繰り広げられるその応酬では、ギリシャ神話やローマ神話、古代エジプトの逸話に由来するダジャレも飛び交います。ド下ネタと高尚な言葉遊びを織り交ぜながら心底楽しそうにダジャレ合戦を繰り広げる親友ロミオとマキューシオは、観ていてとっても楽しかったです。
それと同時に、とてもむつかしかっただろうなとも思います。言わずもがなですが、マキューシオ役の宮崎秋人さんは演技がめちゃくちゃうまい。道枝くんとは経験値が違いすぎますし、年も12才ちょうど一回りも離れてる。そんな秋人さんと、ロミオとマキューシオとして同年代の対等な親友の雰囲気を作らないといけない。プレッシャーは大きかったでしょう。道枝くんは(僕のレベルに合わせてもらっていてはいけない、僕が追い付かなきゃ)と強く考え込む性格でしょうし。
初日後のステージ誌インタビューでは、秋人さんと登場前に無言で握手するのがルーティーンになっていると教えてくれました。必死に食らいついて頑張っていたんだなとその握手を想像すると泣いちゃいそうですし、実際ロミオとマキューシオとベンヴォーリオの仲良し三人組のシーンはここ以外でもとっても良い自然な雰囲気だったように感じました。
そしてですねえ、このダジャレ合戦のシーンに関わらず、私は秋人さんのマキューシオが好きすぎる。
くねりくねりとした一切安心感のない関節、もはや芸術的とも言える重心の置き方、重力を感じさせないふわっと飛び跳ねる様。
掴みどころがなくて、仲間うちでは卑猥な下ネタばかり。でも実際は大公閣下の身内というとてもロイヤルな血筋。それもあってか着ている濃紫のスーツには張りがあり、赤と黒に綺麗にマニキュアされた爪とその指にたくさんつけられた指輪にも安っぽさを感じさせない。
仲間うちでの卑猥な下ネタでもロミオとのお得意のダジャレ合戦でも披露されるとんでもない語彙力。高い教育を受け、たくさんの書物を読んできたのであろうことが容易に想像できます。
聞き手を惹きつけて離さない巧みな話術と決してしっぽを掴ませないひらりはらりとした身のこなしで、今まで何人の女性を泣かせてきたことか。きっと夜もお上手です。
私は現実世界でこういう男ばかりに恋をしてしまいます。
飄々としていて、頭が良くて。清潔感があって、なんだか優しく笑っていて。近寄ってきたと思って追いかけてみたらもうそこにはいなくて、キョロキョロしていたら真横にいたりして。私のことは見透かしてくるくせに肝心のお前のその目の奥は何を見ているのか決して教えてくれない男です。
好きですねえ、マキューシオ。私が舞台上ロミオの次に目で追いかけていたのは間違いなくマキューシオでした。カテコのダンスも上手なんです。あれれ、私は恋をしちゃったんですかね(笑)
そして、大橋くんがマキューシオを気に入ったのもよく分かります。
これはとあるご縁から一緒に入った藤原担さんと話していたことですが、大橋くんがブログで言っていたマキューシオのような役がしたいというのは別に「きゃー大橋くんったらあんな下ネタたくさんの役がしたいの!?」ということではなくて、きっとあの関節クネクネムーヴに大橋くんのダンス魂がくすぐられたんだと思います。あと、あの難しすぎるのに長すぎるひとり語りのセリフと、狂った死にっぷりに圧倒され気に入ったのではないかなと。
俺もやってみたい俺もやれる、私は大橋くんのそういういつだって絶えない挑戦心がすごく好きです。どんなユニットに所属していようが、していまいが、隣に誰がいようが、この俺大橋和也は絶対にスーパーアイドルになるんだという心意気が。おっと私の中の和也LOVE部の人格が出すぎてしまいましたね(笑)
大橋くんの中のその部分が、今回のマキューシオにくすぐられたのかなと思いました。
そう思うと、ロミジュリ初日見学後大橋日刊での「僕もちょっと狂った感じやってみたい笑笑」がものすごく愛おしく感じませんか?特にお得意の「笑笑」が。
まあ、ちょっと狂った感じの役をこなす彼は全く想像できませんが(笑)
次に挙げるのは、モンタギュー家とキャピュレット家の決闘。ロミオの親友マキューシオがジュリエットの従兄ティボルトに殺され、その報復にロミオがティボルトを殺す一連のドラマティックなシーンです。
街中で鉢合わせた両家両陣。ティボルトが剣先をロミオに向け決闘を申し入れると、ロミオは剣を抜くのではなく彼の前に膝をついた。
ティボルト「やいロミオ、貴様に対するなけなしの愛情では挨拶の言葉はこれしかない ─── 貴様は悪党だ。」
ロミオ「ティボルト、こんな挨拶をされたら当然腹を立てるところだが、君を愛さねばならない理由があるんだ、だから聞き流すよ。それに俺は悪党じゃない。だから、このまま別れよう。まだ俺という人間が分かってないらしいな。」
ティボルト「小僧、そんなことで貴様が俺に加えた侮辱の言い訳がたつか。向き直って剣を抜け。」
ロミオ「断じて、君に侮辱を加えた覚えはない。むしろ君の想像以上に君を愛しているんだ。理由はそのうちちゃんと説明する。だからキャピュレット ─── 今ではその名も自分の名前と同じくらい大切に思っている ─── 分かってくれ。」
ロミオは今まで長い間散々いがみ合ってきたティボルトの前に膝をつき、向けられた剣先に自らの喉元を近づけ差し出します。
しかし、それまで黙って話を聞いていたマキューシオがここでしびれを切らしてティボルトに斬りかかり、乱闘が始まる。斬り合うマキューシオとティボルトの間に割って入ったロミオ。荒ぶるマキューシオを抑えたロミオの腕の隙間から、マキューシオはティボルトに刺され死んでしまいます。
親友マキューシオを刺し殺したティボルトは逃げ、自分の腕の中で息絶えたマキューシオを見て、ロミオは豹変します。
親友を殺したティボルトに対する怒りに支配され、理性がぶち飛ぶのです。
この演技、ここのロミオの演技がもうすごかった。表情の切り替わりのグラデーションがすごすぎて、なんだかもっのすごくコマ数の多いアニメーションを見ているような気にもなりました(うーーーんこの表現が正しいのかはわからない)。
親友と妻の従兄が斬り合っているのをなだめようと眉毛を八の字にした困り顔で乱闘騒ぎの中を駆け回るロミオでしたが、親友マキューシオが殺されてからは表情が一転。自らの腕の中で息絶えた親友を見届けて顔を上げたロミオのこめかみには血管が浮き、顔には血が上り、焦点は空中に定まり、わなわなと怒りに震え、ティボルトへの復讐を吼えます。もうだれにも止められません。落ち着けと叫ぶベンヴォーリオの声も耳に入りません。
この表情の移り変わり。そして放つ殺気と纏うオーラと肉体のビジュアルのコントロール。あのすごさをうまく言い表せない自分の語彙の足りなさが本当にもどかしいです。
今さっきジュリエットと結婚したために、今さっきティボルトが親戚となったロミオ。しかしこの決闘の場でこの事実はロミオしか知りません。家族になったティボルトに温和に語りかけていたロミオ。
しかし目の前で親友が殺され、理性はなくなり、ジュリエットの従兄であるということも親戚関係になったこともすっかり忘れ、ただティボルトへの殺意に操られる様は心底怖かったゾッとした。狂っていた。台詞のない数秒間、表情とオーラだけで演じた数秒間。これが演技であることを忘れ、ロミオは荒ぶる怒りの感情に振り回されてぶっ倒れちゃうんじゃないかと心配にもなった。一瞬であそこまで表情と、纏うオーラを変えられるものなのか。それだけでなく浮く血管や血が上り真っ赤になる美しいお顔といった肉体のコントロール。すごかった、本当にすごかった。もうそれしか言えません。
そしてこのロミオの腕の中で死んだマキューシオ。私が恋するマキューシオは、息絶える直前にこんな台詞を残します。
マキューシオ「~略~どっちの家もくたばりやがれ!俺をウジ虫の餌にしやがって。やられたよ。しかも、したたかにだ。お前らの家なんか──(ここで息絶える)」
この台詞は、マキューシオにしか言えない台詞です。
マキューシオはモンタギュー家もキャピュレット家も統制する立場である大公閣下の身内。家柄的には本来中立の立場です。しかしそれに関係なく親友としてロミオ側であるモンタギュー家派閥として剣を抜いてキャピュレット家派閥に立ち向かい、ティボルトに殺された。
そして最期の台詞は、「どっちの家もくたばりやがれ!」です。家同士の争い、血縁的にはそこには全く関係のないのにそれによって殺されたマキューシオ。なんだか観ている私たちの言葉を代弁してくれたようにも感じて、この死に際マキューシオの心の叫びはすごくリアルに記憶に濃く残りました。
ロミオはこの後、ティボルトを殺してしまいます。そして殺した後正気に返り、自分の犯した罪に激しい後悔をして
ロミオ「ああ、俺は運命の慰み者だ。」
と泣き叫び走り去る。
ここまでの一連のシーン、私は若い役者が演じるロミジュリの良さが最もよく出たシーンのひとつだと感じました。
これまでさんざんいがみ合いやり合ってきたティボルトに対して、ジュリエットとの密かな婚礼を済ませてからは「断じて、君に侮辱を加えた覚えはない。むしろ君の想像以上に君を愛しているんだ。」と都合よく言ってみたり。でも親友マキューシオが殺されたらば、怒りに震え理性はぶち飛びその頭はティボルトへの殺意だけに支配される。そして殺してしまう。
これだけ感情に振り回される様を見ても(おかしな話だ)と思わないのはロミオの若さを感じられるからではないかなと、私は思います。
ロミオは若い。何より若い。
ロミオ自らも持て余すその若さの力が観客にぶつけられ圧倒されます。
18才でロミオを演じること、これは道枝くん本人にとって意味あるだけではなく、ロミオとジュリエットを上演するうえで大きな大きな意味を持つのだと再確認させられました。
次は、ロミオ追放の報をばあやから受けた後、ジュリエットのセリフです。
ジュリエットは従兄ティボルトが夫ロミオの手によって殺されたこと、それにより数時間前に婚礼を済ませた夫が殺人の罪に問われヴェローナから追放となったことをばあやから知らされます。
ジュリエットは錯乱状態に陥り、泣き喚き、ばあやにすがりつく。そうでしょう、大人の私でもそうするでしょう。だって意味わかんないですもん。数時間前に結婚したばかりの愛する夫が殺人をし、しかも殺したのは大好きな自分の従兄で、その罪により夫はこの都市から追放されるんですもん。急展開すぎるてんやわんやすぎる。
でも、延々ロミオを罪人と罵り罵倒するばあやに対して、ジュリエットは強い口調でこう言ってのけるのです。
ばあや「ご自分の従兄を殺した男をよく言うんですか?」
ジュリエット「自分の夫になった人を悪く言えて?」
実は道枝担の私が唯一毎公演欠かすことなく泣いてしまっていたのは、ロミオの出てこないこのシーンでのジュリエットのこの一言でした。
前後にもジュリエットのセリフが長く続くこのシーンですが、前後どのセリフよりもなぜかこの叫びの一言が私に深く刺さりました。この文章を書きながら、今も思い出して泣きそうです。
なんでこの一言なのか、それは正直わかりません。直前まで涙が出る気配は一切ないのに、この一言がジュリエットから放たれた瞬間ドバっと急に涙が溢れます。この一言で胸が急にいっぱいになって、一瞬で感情のキャパを超えて、泣いてしまいます。入った毎公演全公演です。
ロミオとは昨日の夜初めて出逢い、そして数時間前に結婚した。
従兄を殺した夫ロミオを愛し、守り、信じるジュリエットのその叫び。彼女の強く純粋な妻としての自覚。これが刺さりすぎました。
思い出してください、彼女はまだ13才です。最速の再放送ですが、角紳太郎、丸岡晃聖、亀井海聖ラインですよ?なんて強いんだろう。私の涙には、(私もこんなに強くありたい)という思いも含まれている気がします。
好きな台詞かと聞かれたら、分かりません。好きな台詞はほかにもたくさんあります。でも、いちばん私の心に残って、いちばん私の心を突き刺して、いちばん感情大爆発させる台詞は全編を通して間違いなくこれです。こう叫べるような恋がしたい。したら私もろとも壊れてしまうかもしれないけど。
次はロミオとジュリエットが初夜を迎えた後、夜明けのシーンです。
ティボルトを殺害した罰として、ロミオはヴェローナから追放になる。追放前夜ロミオは約束通りキャピュレット家ジュリエットの寝室に忍び込み、二人は初夜を迎えます。そしてその夜明けロミオは宣告通りヴェローナからマントヴァに立ち、結果として生きている状態で二人が会えるのはこれが最後。
この夜明けのシーン、旅立つロミオと留まるジュリエットの別れのシーンが、このロミジュリではとても丁寧にそれはそれは大切に描かれていました。
薄暗い舞台上に、東から昇る朝日を模したスポットライト。それにシルエットを許す二つの影、ロミオとジュリエット。美しかった。本当に。息をのむほど美しかった。そこにいるのに、目の前にいるのに、どこまでも絵画的だった。
舞台中ずっとシャツの上からつけられ華奢なウエストを露わにさせていたベルトは外され、朝日を模した照明によってシャツに透けるロミオの身体。すとんとしたデザインのネグリジェに身を隠したジュリエットの身体のラインも、透かされ輪郭を輝かせます。
若い二人の、まだ幼い二人の恋が、ここまでドラマチックに感傷的に描かれるとは、、、二人は私には想像もしえない程の大きな大きな恋の力に突き動かされていたのだなと、改めて噛み締めさせられました。まるで嘘みたいなこの恋だけど、お遊びなんかじゃなかったのだなと、ああ本気だったんだなと、、、
この別れを惜しむシーン、二人の台詞と感情の流れとしては、
→朝が訪れたことを信じず、ロミオを旅立たせたくないジュリエット
→朝が訪れたんだよとジュリエットを諭し、旅立とうとするロミオ
→お願いだからそばにいてほしいとロミオにすがるジュリエット
→愛するジュリエットがそこまで言うならと、ここで死んでもいいと覚悟をしてまでキャピュレット家の館に留まることを決意するロミオ
→急に我に返り、早く行けとロミオをマントヴァに立たせるジュリエット
です。
そうですここでもジュリエット主導です。この構図は一貫してるんですね。
もしも仮に二人が普通に恋をして普通に結婚生活を送れていたとしたら、ロミオはジュリエットの尻に引かれ、不憫ながらも面白おかしい幸せな家庭を築いていたのかなあと考えたりもしてしまいます。
ただただ一緒にいたいと願っただけの二人はなぜ許されなかったのか。世界中で許されるその普通の恋が結婚が、なぜ二人には許されなかったのか。誰目線なんだって話ですが、とても悔しいです。
そしてこのシーン、私には面白く気になる台詞があります。
この夜明け別れのシーンでロミオは、ジュリエットと別れなければならないことを知らせる朝日(太陽)を「妬み深い光」、この場にいることを許してくれる夜を保証する月は「女神の額からの青白い照り返し」と例えます。
しかし物語は遡って冒頭バルコニーのシーン、ロミオはジュリエットを「美しい太陽」と例え、太陽であるジュリエットに対して「妬み深い月を殺してしまえ!」と叫びます。
ジュリエットはまるで美しい太陽だけれど、ジュリエットとの別れを知らせる太陽は妬み深い。美しい太陽に対して妬み深い月を殺してしまえと叫ぶけれど、ジュリエットと抱き合うことを許してくれる月は女神。まるで真逆のことを言っています。気持ちのいいまでの矛盾です。
ロミオは本当にその場の感情に突き動かされるままに行き当たりばったりに発言し、行動し、生きているのだなあと。でも、都合がいいことばっかり言うけれど、あっちへこっちへまるで正反対に感情に振り回されたりもするけれど、その時々の瞬間を生きるロミオに嘘はひとつもなく全て本気なんだろうなあとも思います。
太陽を美しいとするロミオも、朝日を妬み深いとするロミオも、月にすがるロミオも、月を殺せと叫ぶロミオも、きっとどれも嘘じゃないし、きっと全部全力です。
ばかみたいに愛に純粋で、恋に精いっぱいで、性に素直で。とっても愛おしいです。ロミオ、愛しいだよ。こんな気持ちにさせてくれるのは、ロミオを演じるのが18才の道枝駿佑だからです。
最後に挙げるのは、ロミオがマントヴァの地でジュリエットの死を知るシーンです。
マントヴァの地に追放になって三日目の朝、ロミオのもとにヴェローナに残してきた従者バルサザーが駆け付け、ジュリエットの死を伝えます。するとロミオはすぐにヴェローナに戻ることを決め、ジュリエットを抱いて毒薬を飲んで死ぬことをその場で決意します。
今までのロミオの言動から考えれば、ここで狂乱してもおかしくありません。というか狂乱するほうが自然でしょう。意味わからんスピードでジュリエットとの恋に転げ落ちたロミオ。今日までずっと自らの若さから生まれる感情に振り回されまくってきたロミオ。ジュリエットが死んだと聞いて、この場で感情どころか四肢が爆発してもなんら不思議には思いません。
でもロミオはここで、肩を落としたり声を荒げたり頭を抱えたり放心状態になったり走り回ったり爆発したりはしませんでした。従者の報を受けても、見た目の態度はほとんど変わりません。
ここで私は、ロミオのジュリエットへの思いが恋から愛に変わった音が聞こえたような気がしました。ジュリエットはロミオと出逢った瞬間から愛を確信していたけれど、ロミオはジュリエットが死んだと聞いたときにやっと愛に定まった。そんな感じです。ジュリエットが死んだと知って、愛を知ったロミオ。まー本当にドラマチックな人生です。
あれだけ感情的で起伏の激しい人生を歩んできたロミオ。自分の死を決めるときは静かに、噛み締めているようでした。その演技がやけにリアルで、なんだか気味が悪いほどでした。
こうして親同士の不和の犠牲になり、若い二人は死んでいきます。
ロミオは仮死状態のジュリエットを抱いて毒を飲んで死に、仮死状態から目覚めたジュリエットは自分を抱いて死んだロミオを抱いて自らに短剣を貫き死にます。
二人はともに、死んでいる愛する人を抱いて死んでゆくのです。普通ありえないことですよね。
このロミジュリはコミカルな喜劇でありながら、最後はパブイメ通りとんでもない悲劇で終わっていきます。声を上げて笑ってしまうシーンもありながら、最後は悲しくて悔しくて苦しくてやるせなくてどうしようもなく綺麗で号泣させられてしまいます。
死をもってしか認められなかった恋、という悔しすぎる悲劇をこれでもかと思い知らされました。
ロミオの道枝くん
公演初日を迎えるまでに、ステージ誌を中心に様々な場所でロミジュリへの思いを語っていた道枝くん。道枝くんらしい素直でまっすぐな嘘のない言葉たちです。
大千穐楽を終えた今、もう一度私のために振り返りたいと思います。お付き合い願います。
「ロミオ役を演じることは、不安しかないです。」
「正直に言うと、ロミオを演じるのは…怖いです。」
「初めはびっくりしました。まさか僕がロミオだなんて……。不安と緊張と、様々な感情が入り混じっていますね。でも、滅多に経験できない役なので、しっかりとやりきりたいなと思っています。今は不安しかないけれど、その不安を楽しさに変えられるようにがんばりたいです!」
「今のところ、楽しみたくてもそれを考える余裕がない(笑)」
───演出森さんとの対談で
「僕も、厳しくしてください!」
「もう、ぜんぶ不安!不安しかない!(笑)でも、この舞台をやりきったら、自分自身が新たに成長できると思うし、自信にもつながると思うんです。」
「本番を迎えても慣れることがなかったです。シェイクスピアの膨大なセリフ量、初めての殺陣、どうしたらいいか分からないことだらけ。演出の森(新太郎)さんからの演技指導も厳しかった…。」
「今の自分が置かれている状況をだんだんと楽しむことができるようになってきました。」
「『自分は今まで知らないことだらけだったんだな』ということに気づかされました。」
「性格的なものなのか、僕はついネガティブに考えてしまいがちなクセがあるんですよ。でも、最近は『これじゃいけないな。もっと頑張らなきゃ!やればできる!!』って思うようになってきました」
「楽しくはなってきていますけど、まだまだ怖いことはいっぱいあります。不安なところは。すごい人たちに囲まれているし。みなさん、巧いので。『ヤバイ、俺』ってなります。とにかく自信がないです。」
「共演者のみなさんにも、たくさんサポートしてもらっています。ベンヴォーリオ役の森田甘路さんとは一幕一場の登場シーンを毎日本番前に合わせてもらい、ティボルト役の小柳心さんには殺陣返しに付き合ってもらっています。宮崎秋人さんとは、マキューシオが最初に登場していくシーンの直前、舞台裏で握手するのがルーティンです。」
「今でも毎日不安だらけです。実はドラマの撮影と舞台の稽古が重なっていた時期に、一回メンタルブレイクしたんです。ジャニーズ以外の仕事は初めて、しかも主演、さらにシェイクスピア作品…と、いろいろなプレッシャーが重なって、タクシーの中で泣いてしまいました。僕メンタルはそんなに強くない、むしろ弱い方だと思いますよ。緊張してる風に見えないとか、辛そうに見えないとよく言われるんですけど、それは単に顔に出づらいだけ。一切隠しているつもりはないし、だからと言って
ああああああああみ゛ち゛え゛た゛く゛ん゛(号泣)(号泣)
最近は良い意味でもそうでない意味でも、なにわ男子のなかでニコニコ埋もれている道枝くんばかり見ていました。それで忘れかけていましたが、そうです道枝くんはいつだって戦う子でした。
入所して早い段階でドラマのお仕事が決まり、エリート組という呼び方を嫌味的な意味合いを込めて使われたりもしました。歌もダンスもまだまだおぼつかないころから、歴の長い大先輩より良いポジションが与えられることもありました。私自身何度も聞こえないふりをしてきた松竹座やSNS上で流れた他担さんからのお言葉は、かなしいかなきっと道枝くんにも届いていたと思います。 悔しかったね。私は戦える強さを持っていないので、全身全霊ペンライトを振ることしかできませんでしたが。
そんな日々のことをJr.維新で一言、「頑張るしかなかった」と静かに真っ直ぐ振り返った道枝くんは、いつもはわんころで天使でばぶちゃんだけど、それと同時にいつだって美しい気高き戦士であることを改めて教えてくれました。
関西ジャニーズJr.としてだけでなく、なにわ男子としても。背負う看板は増えました。ロミジュリ稽古期間はいつものなにわ男子のお仕事はもちろん、「俺の家の話」の撮影、番宣、新しく始まる新冠番組「まだアプデしてないの?」、そして最後の高校生活、卒業式、、と本当に大変だったと思います。
そんな日々の中で、たくさんの不安の中で乗り越えた初単独主演舞台ロミオとジュリエット。戦ってくれました。だいすきな道枝くんです。私の信じる神様は今日も気高く美しくて、私を強くさせてくれます。
このロミジュリを経て、またひとつ強くなったのでしょう。これからどんな扉を開けていくのかどんな景色をその綺麗な瞳に映していくのか、とても楽しみです。
なにわ男子の道枝くん
ここまで脱落せずに読んでくださってる方はどのくらいいるんでしょうか?ま、気にせずお構いなしにしゃべりたいと思います。
道枝くんは、ロミジュリ関係の単独インタビューでもなにわ男子のお話をたくさんしていました。道枝くんにとってなにわ男子という存在が良い方向に、大きく進んでいるのだなと何度も何度も思わされました。
これもまた私のために、今一度整理して振り返らせてください。もー終わりますので。せっかくここまで辛抱強く読んでくださったもの好きな方々、よければ最後までスクロールしてってくださいな。
「まずはこれを成功させて、しっかりなにわ男子に貢献していかないといけないなと思っている。」
「すごくうれしいことだけど、未知の世界なのでどうなるかはわからないですね。でも、自分のためにも、なにわ男子のためにも、今回の経験を持ち帰って、今後の活動にいかせたらいいなと思っています。」
「メンバー7人揃うと、すごく楽しいし、安心する。」
「僕がロミオ役を演じると決まったときは、メンバーみんなが『えー!すごーい!』ってびっくりしていました。」
───同じ時期に藤原丈一郎さんが舞台『月とシネマ』に出演されますが、お話しされたりも?
「たまに写真を送ってきたりとか、『青木さん家の奥さん』中に。口では言わないけど、多分、がんばれよってことなのかな。さりげない感じで。すごいうれしかったですよ、それ。あと、マネージャーさんと(高橋)恭平と(西畑)大吾くんと大橋(和也)くんが4ショットをなにわ男子のグループメールに送ってきて。「東京組がんばれ~♡」って。普通ですけど、ちょっとうれしかったなと思って。メンバーからの信頼というか、がんばっているのを信じてるからってことなのかなって……重く考えるとね。ま、向こうは何気なくフツーに「がんばれ~」ぐらいでしょうけど(笑)。僕はそれ、すごくうれしかったです。」
「なにわ男子は僕にとってリラックスできる場所」
「メンバーのみんながいるから安心できる。それってすごくありがたいことだなと思います。最近はみんな個々のお仕事もあって忙しいけど、困ったら相談に乗ってほしいです。」
「丈くんには舞台が決まったときに『やばいです、怖いです』って話をしました。そしたら、『大丈夫、大丈夫』って元気づけてくれて。そのひとことで、”自分らしいロミオができればいいのかな”と思えました。」
「休演日に仕事で一日だけ大阪に帰って、久しぶりにメンバーと会って肩の荷を下ろして楽しめた。」
「舞台の後には関西の音楽番組への出演も決まっていたので、久しぶりにアイドルができるのをモチベーションに千秋楽まで頑張れました。」
「あ!でもなにわ男子での仕事があると、メンタルが沈んでてもすぐ立ち直ります。メンバーがいてくれるだけで楽しいし、一緒にいるとリラックスできるんで。1人の仕事のときはどうしても気が張ってしまうけど、みんなと会うと自然と笑顔が増える。楽しすぎて暴走しちゃうことも多々あるんですけどね(笑)。みんながツッコんだりフォローしてくれるから安心できるし、一緒にいることを楽しんでます。」
「それから、絶対にやっておきたいことがもうひとつあります。なにわ男子の活動を通して『ジャニーズのアイドルってやっぱりすごいね』と世間に知ってもらいたいです。いま世界中にいろんなタイプのアイドルがいて、もちろんそれぞれ魅力的ですが、その中で自分自身がジャニーズを自覚することが最近、増えたんですよね。ジャニー(喜多川)さんの想いを継いで、ジャニーズに所属している僕らにしかできないパフォーマンスをもっと突き詰めていきたい。その結果、『なにわ男子って最高だね』と言ってもらえたらいいなって。」
「僕はジャニーズに入ったときから、もうジャニーズしかない、ジャニーズで生きていくんや!って決めているんで。大人になるにつれて責任が増して、背負うものの重みももしかしたら変わっていくのかもしれんけど、ジャニーズとして生きていく覚悟はできています。」
なにわ男子があってよかった。強く気高い戦士である道枝くんに、気を許せる帰る場所ができてよかった。
大好きな人が増えると、弱くなれる場所ができると、また強くなれるよね!
結成当初、私たちファンでさえ戸惑うところも多かったのだから、彼らはその何百倍もたくさんのことを感じて考えて受け入れたんだろうなーと思います。むつかしいことたくさんあったよね、これからもきっとね。
でもいまの道枝くんとなにわ男子の関係性を見ていたら、そんなこれから迎えるであろうむつかしいこともなんだって乗り越えられる気がします。
この6人がついていてくれるなら、道枝くんはいっぱい笑っていっぱい泣ける。そうやって思えたのは、実は最近のことで、、、、
なにわ男子という存在がなくても、道枝くんがロミオを演じきることはきっとできたでしょう。でもなにわ男子という存在があったから、道枝くんのロミジュリに対する不安な心をいろんな媒体で知ることができました。そして弱い自分も許してくれる場所があるからこそまた強くなることができたんじゃないかなと思います。
なにわ男子ならきっとこれからも最高の景色をたーくさん見せてくれる、一緒に見てくれる。というかなにわ男子という存在自体が在ってくれるだけでそこは最高の景色!
関西ジャニーズJr.なにわ男子の道枝駿佑くんが、今日もアイドルで、なにわ男子で良かった!!!!!!!
はい、ここまでが2021年6月頭にはおおよそ書き上げていた文章です。そしてここから下は、
なにわ男子のデビューが発表された世界
で書いています。
あまりにも遅筆ゆえ大千穐楽から三か月も感想ブログを温めていたら、道枝くんは19才になり、なにわ男子はデビュー発表がなされました。
これはあくまでロミジュリ感想ブログなのでデビューについてのクソデカ感情は押さえますが、さすがに追記をしなくてはと思い、またこのブログの公開が遅れそうです、、、(笑)
道枝くんがロミジュリを走り抜けられた大きな支えのひとつが、このなにわ男子の存在だったのは間違いありません。
そんな彼らが、彼らの望む限り一緒にいられることが約束された。これからも道枝くんの周りには6人がいる。喜びも悲しみも共有できる。
最強じゃん。
私は、道枝くんはなにわ男子というグループに所属してからも、心のどこかでは『デビューするまで個人戦』という思いがあるタイプだろうなーと勝手に思っていました。
でも、これからはついに団体戦です。
道枝くん、ロミオとジュリエットお疲れさまでした。
なにわ男子デビューおめでとう。
デビューしてくれてありがとう。
道枝くん、信じてたよ。
ここまで信じさせてくれてありがとう。
これからも、道枝くんが信じるものを私も一緒に信じたいな。
参考